療養型病院の看護師が行う看取りケアとは?

療養型病院の看護師が行う看取りケアとは?

療養型病院の看護師が行う看取りケアとは、回復が難しく人生の最終段階にある患者さんの苦痛をできるだけ和らげ、その人らしく過ごせるように支えるケアです。治療だけを続けるのではなく、患者さんの意思や家族の希望を確認しながら、医師や介護職などと連携して最期まで支援します。

具体的には、痛みや呼吸苦などの症状の観察と緩和、日常生活の援助、家族への説明や心の支援、死亡後のケアまでが含まれます。

療養型病院の看護師が行う看取りケア

看取りケアは、患者さんの状態を見守りながら、身体的・精神的な苦痛を減らし、本人と家族が納得できる時間を過ごせるようにする看護です。

療養型病院では、急性期の病院のように病気を治すための処置を中心に行うのではなく、慢性疾患や重い障害を抱える患者さんの療養生活を長く支えることがあります。そのため、病状の変化だけでなく、患者さんの生活習慣、価値観、家族との関係なども踏まえてケアを考えます。

看取りの段階で行う主なケア

看護師は、患者さんの状態や希望を確認しながら、次のようなケアを行います。

ケアの内容 具体例
状態の観察 呼吸、意識、脈拍、体温、血圧、食事や水分の摂取量などの変化を確認する
苦痛の緩和 痛み、息苦しさ、吐き気、不安などの有無を確認し、医師と相談して対応する
清潔の援助 清拭、洗面、口腔ケア、整容、排せつの援助などを行う
安楽な姿勢の援助 体位を調整し、呼吸や痛みが少ない姿勢を保てるようにする
食事・水分への対応 食べられる量や飲み込みの状態を確認し、無理のない方法を検討する
家族への支援 病状の変化を伝え、面会や声かけの方法、過ごし方について相談する
死亡後のケア 清拭や着替えなどの死後の処置を行い、家族が故人と過ごす時間を支える

身体の苦痛を和らげる

看取りの時期には、痛み、呼吸苦、発熱、むくみ、吐き気、だるさなどが現れることがあります。看護師は表情、会話、呼吸状態、体の動きなどを観察し、患者さんがどの程度つらさを感じているかを把握します。

意思を伝えることが難しい患者さんでは、表情の変化や落ち着きのなさ、体を動かす様子なども手がかりになります。ただし、これらの反応だけで苦痛の原因を断定せず、医師や他の医療職と情報を共有して対応します。

薬の使用や酸素投与などが必要な場合は、医師の指示と病院の方針に基づいて実施します。看護師が独自に治療内容を決めるのではなく、症状の変化を医師に報告し、ケアの方法を調整します。

食事や水分を無理なく調整する

人生の最終段階では、食事や水分を取る量が少なくなることがあります。無理に食べたり飲んだりすると、むせ込みや誤嚥につながる場合があるため、飲み込みの状態や本人の希望を確認しながら方法を考えます。

食べられないことだけを問題にするのではなく、口の中の乾燥を防ぐ口腔ケアや、本人が口にしやすいものを少量試すことなど、苦痛を増やさない援助を検討します。点滴や経管栄養をどうするかは、病状、本人の意思、家族の考え、医療上の見通しを踏まえて、医師や多職種で話し合います。

患者さんの意思や価値観を確認する

看取りケアでは、「どのように過ごしたいか」「どこまで治療を受けたいか」「誰にそばにいてほしいか」といった本人の意思を大切にします。本人が意思を伝えられる場合は、看護師が日々の会話やケアを通して希望を確認します。

意思を伝えることが難しい場合は、これまでの発言や生活上の大切にしてきたこと、家族から聞いた情報などを手がかりにします。ただし、家族の希望だけで本人の意思を決めつけるのではなく、医療チームで情報を共有しながら方針を検討します。

治療やケアの希望は、状態の変化によって変わることもあります。一度決めた内容を固定するのではなく、必要に応じて本人や家族と話し合い直します。

家族の不安や迷いを支える

家族は、病状の変化に戸惑ったり、「何かできることはないか」「苦しんでいないか」と不安を感じたりすることがあります。看護師は、観察した状態や今後起こり得る変化を、家族が理解しやすい言葉で伝えます。

面会時には、手を握る、声をかける、好きな音楽を流すなど、患者さんのそばでできることを提案する場合があります。ただし、面会時間や感染対策、病棟の規則などによって対応できる範囲は異なります。

家族が迷いや罪悪感を抱えている場合も、すぐに結論を求めるのではなく、気持ちを聞きながら必要な情報を整理します。判断が難しい内容は、医師、医療ソーシャルワーカー、リハビリテーション職、介護職などにも相談します。

多職種で看取りの方針を共有する

看取りケアは、看護師だけで行うものではありません。医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション職、管理栄養士、介護職、医療ソーシャルワーカーなどが、患者さんの状態や希望を共有して進めます。

看護師は、患者さんのそばで過ごす時間が長い立場として、表情や生活の変化、本人の言葉、家族の反応などをチームに伝えます。反対に、医師の治療方針や他職種の見解を確認し、日々のケアに反映します。

カンファレンスでは、次のような点を確認します。

  • 患者さんが現在感じている苦痛や不安
  • 病状の変化と今後予想される経過
  • 本人が希望している過ごし方
  • 家族が理解している内容や心配していること
  • 食事、点滴、酸素、薬などの治療・ケアの方針
  • 急変時や状態が変化した場合の連絡・対応方法

亡くなった後に行うケア

患者さんが亡くなった後は、医師による確認を経て、看護師が死後の処置を行います。内容には、体を清拭する、衣服を整える、髪や顔を整えるなどのケアが含まれます。

死後の処置の方法や家族の立ち会い、面会の扱いは、病院の方針や感染対策、患者さんと家族の希望によって異なります。家族が患者さんに声をかけたり、体に触れたりできる時間を設けることもあります。

看護師は、亡くなった後の家族の悲しみや混乱にも配慮します。必要に応じて、病院内の相談窓口や専門職につなぐことがあります。

療養型病院での看取りケアが一律ではない理由

療養型病院であっても、看取りの方法や対応できる医療処置は施設ごとに異なります。病院の機能、医師や看護師の配置、夜間の体制、家族の面会方法、急変時の搬送方針などによって、実際の対応が変わります。

入院中の患者さんや家族が確認しておきたい場合は、次の点を病棟の看護師や主治医に尋ねると具体的な方針を把握しやすくなります。

  • 病院で看取りまで対応できるか
  • 状態が急に変化した場合の対応はどうなるか
  • 本人が希望する治療や延命処置をどのように共有するか
  • 面会や付き添いはどの程度できるか
  • 家族ができる声かけやケアには何があるか
  • 亡くなった後の手続きや搬送について誰に相談するか

療養型病院の看護師に求められる役割

療養型病院の看護師には、病状を観察する力だけでなく、患者さんの小さな変化を捉え、本人と家族の希望を医療チームにつなぐ役割が求められます。

看取りケアでは、何か特別な処置を行うことだけが重要なのではありません。苦痛を減らす、清潔を保つ、安心できる姿勢を整える、本人の話を聞く、家族がそばにいられるように支えるといった日々のケアも大切です。

ただし、具体的な治療やケアの内容は、患者さんの病状、本人の意思、家族の希望、主治医の判断、病院の体制によって異なります。まずは主治医や病棟看護師に、現在の状態と今後の見通し、希望できるケアを確認することが重要です。