療養病棟の看護師不足への対策とは?

療養病棟の看護師不足への対策とは?

療養病棟の看護師不足への対策は、採用数を増やすだけでなく、離職を防ぐこと、業務を整理して看護師の負担を減らすこと、必要な時間帯に人員を配置することを組み合わせて進めます。特に、慢性期の患者に多い医療的ケア、認知症対応、看取り、夜勤の負担を把握し、現場に合う対策を優先することが重要です。

療養病棟で看護師不足が起こる主な理由

療養病棟の人手不足は、単純に看護師の人数が少ないことだけが原因とは限りません。業務量、勤務時間帯、患者の状態、経験者の偏りなどが重なって起こります。

  • 夜勤や交代勤務を担当できる看護師が限られている
  • 高齢患者、認知症患者、医療的ケアが必要な患者への対応に時間がかかる
  • 吸引、経管栄養、褥瘡ケア、排泄介助、看取りなどの業務が集中する
  • 記録、委員会、会議、家族への説明など、直接ケア以外の業務が多い
  • 新人教育を担当する職員が不足し、教育負担が一部の看護師に偏る
  • 給与、夜勤回数、休みの取りやすさ、職場の人間関係などへの不満が蓄積する

したがって、求人を出しても応募が少ない場合は、採用活動だけでなく、退職理由や勤務表、時間外勤務、休暇取得状況を確認する必要があります。

最初に行うべき対策は「不足」の内容を分けること

最初に、看護師の人数不足なのか、夜勤者不足なのか、特定の経験を持つ職員の不足なのかを分けて確認します。種類によって、必要な対策が変わるためです。

  1. 勤務帯別の人数を確認する。日勤、夜勤、早出、遅出などに分け、どの時間帯で負担が大きいかを見ます。
  2. 患者の状態と業務量を確認する。医療的ケア、認知症対応、入浴、食事、排泄、急変対応などの発生状況を整理します。
  3. 職員の勤務状況を確認する。残業、夜勤回数、休暇の取りやすさ、急な欠勤、応援勤務の回数を確認します。
  4. 退職・異動の理由を確認する。退職者への聞き取りや匿名アンケートを使い、待遇、教育、人間関係、業務負担などを分けて把握します。
  5. 安全上の最低条件を確認する。病棟の運営に必要な配置や院内ルール、関係する制度上の条件を確認し、人数を減らすことだけを目的にしないようにします。

たとえば、日勤の業務量が多い場合と、夜勤を担当できる人が少ない場合では、同じ「看護師不足」でも解決策は異なります。

採用を改善するための対策

採用では、療養病棟の仕事内容と勤務条件を具体的に伝え、応募者が働く姿を想像できるようにすることが大切です。

求人内容を具体化する

「アットホーム」「やりがいがある」といった表現だけでなく、担当する患者の特徴、夜勤の有無、教育期間、記録方法、残業の状況、休暇の取り方を、確認できる範囲で示します。

療養病棟で求められる看護は、急性期病棟と異なる面があります。慢性期看護、退院支援、家族支援、看取り、生活を支えるケアに関心がある人へ、具体的な仕事内容を伝えると、求人とのミスマッチを減らせます。

見学と面接で不安を減らす

応募前の病棟見学や勤務者との面談を設けると、職場の雰囲気や業務内容を確認しやすくなります。見学では、職員同士の声かけ、患者への接し方、記録や申し送りの方法なども見てもらうとよいでしょう。

採用後の定着まで設計する

採用人数だけを目標にせず、入職後の一定期間に勤務を続けられているかを確認します。中途採用者には、経験があっても病棟のルールや記録方法が分かるまで、相談相手と確認期間を設けます。

離職を防ぐための勤務環境の改善

看護師不足を長期的に改善するには、今いる職員が働き続けやすい勤務環境を作る必要があります。特に、夜勤と休暇の負担が一部の職員に偏っていないかを確認します。

  • 夜勤回数や夜勤専従の扱いを職員ごとに確認する
  • 希望休や有給休暇を申請しやすい運用にする
  • 育児、介護、通院などに対応できる勤務時間を検討する
  • 急な欠勤時に応援を出す手順を決める
  • 新人や異動者に過度な即戦力を求めない
  • 管理者が職員の負担や不満を定期的に聞き取る

短時間勤務、固定勤務、夜勤回数の調整などが可能かどうかは、病院の規定や配置状況によって異なります。実施する場合は、個別対応だけで終わらせず、勤務表全体への影響と他の職員との公平性も確認します。

業務を整理し、看護師にしかできない仕事へ集中させる

看護師不足への有効な対策の一つは、看護師が担う業務を見直すことです。ただし、業務を他職種へ移す場合は、資格、教育、院内規程、安全確認の手順を明確にする必要があります。

業務を3種類に分ける

病棟業務を、次の3つに分けると整理しやすくなります。

分類 考え方 見直しの例
看護師が判断・実施する業務 患者の状態判断や専門的な看護が必要な業務 観察、看護計画、状態変化への対応など
教育後に他職種と分担できる業務 手順と判断基準を定め、安全確認ができる業務 生活援助、環境整備、物品準備など
廃止・簡素化を検討する業務 目的や効果が不明確な業務 重複した記録、参加者が多すぎる会議、不要な報告

看護補助者、介護職、薬剤師、リハビリ職、事務職などと役割を分ける際は、「誰でもできる仕事」と一括りにせず、患者の状態ごとの実施条件と中止基準を決めます。看護師が確認すべき場面も明確にします。

記録・申し送りを見直す

同じ内容を複数の様式へ記録している場合は、重複を減らせる可能性があります。申し送りも、すべての情報を読み上げるのではなく、状態変化、当日の注意点、観察が必要な患者を中心に整理します。

ただし、記録を減らすこと自体を目的にせず、必要な情報が抜けないことを確認します。変更後は、記録漏れや情報共有の不備がないかを確認してから定着させます。

教育と応援体制を整える

療養病棟では、慢性期看護の経験が少ない看護師や、ブランクのある看護師が働くこともあります。教育が不十分だと、本人の不安だけでなく、指導担当者の負担や早期離職にもつながります。

  • 入職時に、病棟の患者層と主な処置を説明する
  • 吸引、経管栄養、褥瘡ケア、急変時対応などを段階的に確認する
  • 独り立ちの基準を業務ごとに決める
  • 相談担当者を決め、誰に聞けばよいか分かる状態にする
  • 新人だけでなく、指導する職員の時間も勤務表に確保する
  • 忙しい病棟へ応援を出す条件と依頼方法を決める

教育期間を短くして早く夜勤へ入れることは、短期的に人数を補えるように見えても、安全面や離職リスクを高める可能性があります。本人の経験と病棟の業務内容に応じて、段階的に任せることが重要です。

看護補助者や多職種との連携を進める

看護師不足を看護師だけで解決しようとすると、採用と離職防止の負担が大きくなります。看護補助者や介護職、多職種と連携し、患者の生活を支える業務をチームで分担します。

連携を進めるときは、次の内容を文書化すると現場で運用しやすくなります。

  • 担当できる業務と担当できない業務
  • 業務を実施できる患者の条件
  • 異常を見つけたときの報告先と報告方法
  • 看護師が最終的に確認する内容
  • 教育、研修、評価の方法

特に、食事、排泄、移動、清潔保持などは患者の状態によって危険性が変わります。業務分担は職種名だけで決めず、患者ごとの状態と必要な見守りを踏まえて設定します。

対策の効果を確認する指標

対策を始めた後は、採用人数だけでなく、負担が本当に改善したかを確認します。次のような指標を月単位または一定期間ごとに比較します。

  • 応募者数、採用者数、入職後の定着状況
  • 退職者数と退職理由
  • 夜勤回数、時間外勤務、応援勤務の回数
  • 休暇取得状況と急な欠勤の発生状況
  • 看護師・看護補助者の業務分担の実施状況
  • インシデント、記録漏れ、申し送りの不備
  • 職員アンケートでの負担感や勤務継続意向

たとえば、採用者数が増えても時間外勤務や退職が減っていなければ、勤務編成や教育、業務分担に別の問題が残っている可能性があります。反対に、業務整理によって負担が減り、患者対応の時間が確保できた場合は、その内容を標準化して他の勤務帯にも広げます。

療養病棟の人手不足対策で避けたいこと

人手不足を理由に、経験の浅い職員だけで夜勤を組む、教育なしで業務を任せる、休憩を削る、記録を過度に省略するといった対応は避ける必要があります。短期的に勤務を回せても、医療安全の低下や職員の離職につながるおそれがあります。

また、看護師の負担を減らすために新しい仕組みを増やしすぎると、かえって業務が複雑になります。対策は一度に増やさず、まず負担の大きい業務を一つ選び、試行、評価、修正の順に進めると定着しやすくなります。

まとめ

療養病棟の看護師不足には、原因の把握、採用の改善、離職防止、業務分担、教育と応援体制の整備を組み合わせて取り組みます。

最初に行うことは、勤務帯別の負担、夜勤を担える人数、患者の状態、時間外勤務、退職理由を整理することです。その結果をもとに、採用を急ぐのか、夜勤体制を見直すのか、看護補助者との業務分担を進めるのかを決めると、現場に合った対策を選びやすくなります。